2021年9月例会 活動報告

2021年9月12日

東京五輪・パラリンピックが終わり選手たちの活躍の余韻も残るとは言え、引き続き緊急事態宣言が発令されているためZOOMでのオンライン開催となりました。
今回は「今年度下期フォトコンテスト」と、写真家の中藤毅彦先生による「技術向上セミナー」の二本立てです。

先ずは役員からの報告事項。 他のフォトクラブの写真展開催予定紹介に、来年度に向けての活動の予定など結構盛りだくさんの内容でした。
続いては今年度下期のフォトコン。

2021年度下期フォトコンテスト

今回も新型コロナのため集まっての撮影会はできず、オンラインでお題を決め、各自撮影した作品を エントリーするというやり方になりました。
フォトコンの進め方は当クラブの「活動報告2021年3月例会」の中で詳しく記載されていますの でご参考まで。

お題は『信号機』です。

しょっちゅう見ているはずの「信号機」ですが、これを対象として『作品』にするにはどうしたものか意外と難しいお題でした。

あちこち信号機を探して歩き回り、いろいろな角度から信号機そのものを撮ってみたり、信号を渡る人を入れてみたりしましたが、どうにも即物的な写真ばかりになってしまいました。

ほかの方の作品を見ると、画像加工のテクニックを駆使された作品もあり皆さんも結構 苦心されたのが解かるようです。
そして顧問の小澤先生によるエントリー作品の講評と作者本人による解説(言い訳)です。

フォトコン作品講評の抜粋

— 加工の先に何を求めたか? 技法の面白さの先に求めるものは何か? もう一歩先に行けなかったかな。
— スナップとして撮るのか、画の完成度を求めるのか難しいお題であった。
— 画の完成度を求められるフォトコンでは、良い画を創るということをより心掛けて構図を決めてほしい。
— 信号機が主役でなく脇役になっているが、写真全体から信号機のイメージを感じさせる作品で良いと思った。
— 空間を空けて余韻を持たせる作品もあるが、ここでは余白部分を削ってぎゅっと詰めた方が良かったと思う
— 邪魔な部分が多い中で信号機の主役と脇役を揃えて上手にまとめられた作品。
— 色を残すのは特殊なことで、特殊が故の面白さまでもっていかないと、ただ技法だけを見せられている感じになってしまう。
— 高い位置にあって切り取り方が難しいモノ(信号機)を撮るもどかしさを感じさせる作品。
— フレーミングそんなに悪くないけど、写真としてもう一歩上に行ける作品かどうかちょっと足りない。
— テーマに合っているかだけでなく、一枚の作品としての完成度の追及を。
— 作者のやりたいことはわかるが、今回のテーマに合わせるには信号が弱いかな。
信号機というお題でこの作品を選ぶのは難しい選択かな。画の完成度ではなく信号機の解釈の問題。―作者の変化球の視点を感じられて良かったが、それ以外がもの足りない。
— ガラスへの映り込みとか、あいまいさがこの作品の良い所。センス良い。
— 人とか背景の街を中心に切り取られているから、信号の入り方がルーズに見えてしまって本末転倒じゃないかなと感じてしまう。

— 取り立ててすごいことをやっているわけではないが、なんとなく画がカッコ良い所のある作品。
— 作者の技術で何でもないものを自分の側に持ってきて良く見せている。

エントリーされた作品に対して一点一点鋭い指摘で厳しく作品の完成度を評価され、でも丁寧に良い所を挙げられるなど優しくコメントしていただきました。
言われてみれば「確かに!」ということばかりで、いつもながら大変勉強になる講評でした。全部で22点、お疲れさまでした。

結果発表

フォトコンの結果は次のとおり。

☆6席

6席 『昼下がりの交差点』Y さん

☆5席

5席『見守る』M さん

☆4席

4席『対岸の信号機』W さん

☆3席

3席『混沌』N さん

☆2席

2席『赤信号、灯る』Y さん

☆1席

1席『・・・?』S さん

中藤毅彦先生による技術向上セミナー

フォトコン終了後は、お待ちかね中藤先生による技術向上セミナーです。お話しいただいたことの中から印象に残ったことを少し抜粋してみます。

これまでモノクロのスナップショットを中心に作品を発表してきています。
ストリートスナップ写真とはごく簡単に言うと、街を歩いていて偶然に出会った光景や人々の姿を、手持ちのカメラでありのままに瞬間的に撮影した写真。

都市というのは一種の劇場のようなものだと思う。
街自体は同じ街の同じ通りを歩いていても、歩く日によって行きかう人々の姿は毎日異なる。
季節によっても、時間によっても、天気によってもまったく街の見え方は変わって同じ瞬間は二度とない。
同じ街を同じ時間に歩いていても、百人の写真家が撮れば百通りの全く違う切り口の写真が出来上がるのがストリートスナップの醍醐味。

スナップ写真は現実の記録でもありながらそこに撮影する人の主観が写りこむ。そうでないと単に街を撮った記録にしかならない。
記録を超えた表現があってこそストリートスナップとして成り立つ。

躊躇しているだけでは人の入ったスナップは撮れない
惹かれるものがあって撮りたいと思った人がいたら、撮映する側が心を開いて人の中に踏み込む勇気が必要になってくると思う。

これまでの作品の9割以上モノクロで撮ってきたと思う。
モノクロ写真は単なる記録ではなく世界を抽象化して作り変えて、白と黒の光と影に写真だけの世界に作り変えてしまう手段である。
本来ある色彩という情報をシャットアウトして、現実と異なる写真だけの世界に作り変えてしまうのがモノクロ表現。

色彩に惑わされない面白さであり、本質をあぶりだす不思議な力がある
モノクロ表現の力はデジタルでもフイルムでも全く変わらない。 両方の良さを選びながら使い分けるのが良いと思う。

まとまった写真作品を発表する手段として大きく分けると写真展と写真集という二つの手段がある。写真展はライブ、写真集はアルバムみたいなもの。 それぞれ大事な手段でどちらも欠けてはいけない。

写真集は印刷されて多くの人の手に渡って自分が死んでも長く残るもので、写真家にとって大事な表現手段。
写真集は写真家自体の作品であるというだけでなく、編集スタッフやデザイナーとかスタッフとの共同作業で作り上げる総合芸術である。
写真集という表現こそが写真家とその読者たちにとって非常に大きな恩恵のある表現方法である。自分自身先達の写真集を見ることで多くのことを学んできた。
これからの発表の仕方は、Web とか動画とかの発表手段が大事になってくると思われる、自分も挑戦していきたい。

このあとQ/Aタイム
Q:写真集と写真展、Web の位置づけは?
Q:次回予定されている写真展はいつから開催される?
Q:モノクロとカラーでは撮る時に意味とかが違うということか?
Q:ストリートスナップを撮る時には何か気になったオブジェとか建物の前とかで待つのか、ひたすら歩いて歩いてその時の偶然のモノを撮るのか?
Q:コロナが終息して国内も海外も自由に行けるようになったら、行きたい場所は? Q:ストリートフォトを撮る時はノーファインダーで撮られるのか?
Q:写真集は総合芸術とのことですが作成時に心掛けている・意識していることは? など

たくさんの質問に答えていただきました!

最後に

中藤先生のセミナー、画面を通してではありますがほんとに沢山の作品を見せていただきながらの講義で、改めて写真の世界の奥深さを気づかされる、目からうろこのお話に溢れた貴重な 機会でした。ありがとうございました。

以上で例会は終了です。皆さまお疲れさまでした。来月はオンラインでなく集まれると良いですね。
たくさんの質問に答えていただきました!